Frederica Bernkastel's diary

「退屈」は私を殺す毒

コインのオモテとウラ

彼女は私と瓜ふたつの姿

 

彼女がオモテだとしたら私はウラ

 

表裏一体の存在

 

彼女は言った

 

この世で最も恐ろしい存在はもう一人の自分自身だと

 

そう

 

私は彼女の生殺与奪の権利をも持っている

 

つまり、いつでもゲーム盤から除外する事ができる

 

私は彼女にいつも囁く

 

「咲かなければ散れ 大成できなければ死ね」

 

自らを死地に飛び込ませる事で奇跡を起こす

 

それが私の仕事であり彼女の仕事でもある

 

どんな物語を紡いでくれるのかしら

 

私を退屈させないで頂戴

 

Frederica Bernkastel

 

 

道は2つしかない

私の駒には大いに期待を寄せているのよ。

 

様々な「スペック」とやらを与えたのだから。

 

私の駒の運命は二つに一つ。

 

私の思い通りに大輪の花を咲かせるか、儚く散るか。

 

咲かなければ散れ。大成できなければ死ね。

 

もし私を失望させて使えない駒だと判断したら、

 

すぐさまゲーム盤から退場して消えてもらうわ。

 

でも散り様くらいは選ばせてあげる。

 

あの子はもう心に決めているようだけれど。

 

Frederica Bernkastel

 

私の駒

駒の分際で自分自身が駒だと自覚してるわ。あの子。

 

何を悟った事を言ってるんだか。

 

プレイヤーは私よ。駒の意志なんて尊重しないわ。

 

あなただってそうでしょ?

 

チェスの駒を指す時、わざわざ摘んだ駒の意志を確認する?

 

ゲームのキャラを操作して、そのキャラの意志を確認する?

 

それと同じよ。

 

だから私は、駒のあの子が真に望んでいる事は決して叶える義理など無いわ。

 

如何自覚しようが悟ろうが、私の駒。

 

こちらに干渉する事は一切出来ない。

 

私が干渉して時には鑑賞するからこそ、無限に等しく広がるこのゲーム盤の世界で、あの子はそこに存在できる。

 

あの子には様々な動きが出来るように施してあるわ。

 

この世界でいう「スペック」ね。

 

だから、私を失望させないでね?

 

Frederica Bernkastel

「奇跡」が「絶対」に屈した瞬間

 

バラバラにした時計を流れるプールに投げ入れて

 

プールの流れだけで時計を組み立てるかの様に

 

色々な偶然やタイミングが幾重にも重なって出来た「奇跡」と呼べる代物

 

それを大切に拾い上げた者たちがいる

 

それが壊れても、両者は呼吸と足並みを揃えて修復する

 

けれども、すぐに壊れてしまう

 

その度に修復を試みれど、修復を繰り返す度に天文学的に低い確率に近づいて、それがまた「奇跡」という代物になっていく

 

奇跡的に修復できた代物を、両者はこれ以上に無いほど丁重に扱ってきた

 

けれども、長持ちはせず呆気なく壊れてしまった

 

まるで、何者かの「絶対」の意志さえも感じる

 

とうとう両者はアレルギー反応を起こした

 

もう修復しないと誓ってしまった

 

まさにこの時「奇跡」が何者かの「絶対」の意志に屈した瞬間そのものである

 

何者かの「絶対」の意志は、ニンゲンには干渉する事が出来ない領域にある

 

ああ 今回のゲームは負けてしまったわ

 

完膚なきまでに駒を取られてチェックメイト

 

今日は、キングの駒だったあの子が、完全に私と同じ瞳になった日

 

 

 

Frederica Bernkastel

無い物強請り

要らないものを持て余して困っている人がいる。

けれども、皮肉にもそれが喉から手が出る程欲している人が大勢いる。

 

それは手に取って持てる代物ではないの。

 

彼女はそれを手放す方法はある病に罹る事だという。

 

手放す立派な口実になるから。

 

けれども、欲しくて欲しくてどうしようもない人は、ある病を欲する彼女、手放したいと考える彼女に対して激しい怒りをぶつけるでしょう。

 

ところが、彼女はそれを持っていることでいつも苦しみ、人生を狂わせかねない凶器にしか視えない。

 

モノの価値は人次第。

同じモノでも、ある人にとっては、幾ら黄金を積んでも決して手に入らず嘆くほどのモノ。

彼女にとっては、自分自身を脅かす忌々しいモノでしかない。

 

 

Frederica Bernkastel

 

 

 

ゲーム盤

 

この世界は何者かによって創られたもの。

 

何かを成し遂げて何かを得たとしても実体など存在しない。

 

過ぎ去っていくと思い込んでいる「時間」とやらに翻弄されて、またまた実体のないモノを追いかけ回しては一喜一憂を繰り返す。

 

あの子も、あなたも、あの人たちも、全て。

 

 

本当は実在しない。

けれども、不変ではないということ。

 

 

それに気がつくまであと何年?

 

 

Frederica Bernkastel

 

 

鑑賞に値する

元々彼女は私と同じ目をしている。

 

この頃その瞳は、より一層深みを増している。

全ての「光」を吸収しそうなくらいにね。

覗き込もうとすれば、深淵に引き込まれてしまいそうでしょ?

 

私はあの子を絶望させたいとは思わないし、手を差し伸べる気もないわ。

 

 

私と同じ目で。

 

どのように足掻いて魅せる?

どのような生き様を魅せる?

どのような散り様を魅せる?

 

 

 

本当に鑑賞に値するわね。

せいぜい私を楽しませて頂戴。

 

 

Frederica Bernkastel